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それでいいんだ力

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「それでいいんだ」という言葉にこそパワーがある

自己肯定感が高いか低いか——人間にとっての永遠のテーマだと思います。

現代心理学には、自分を思いやるセルフコンパッション1という概念があります。

けれど、知識として知っているだけでは変化は起きません。実際に口に出して「それでいいんだ」と言えることにこそ力がある——私はそう感じています。

私は以前からセルフコンパッションを学び、いくつか手法も取り入れてきましたが、即効性があるものではないと気づきました。
落ち着いて時間をとって練習する必要があるからです。

そんな中でも「それでいいんだ」という言葉は最も直感的で、今この瞬間に使える強い言葉だと思っています。

NPOでボランティアをしていた時、どれだけ努力しても目標に届かず「全然ダメだ」と思っていた時、先輩から「それでいいじゃん」と言ってもらえた経験が、今も心に残っています。

「成果がどうかは自分ではわかりにくいもの。比較するんだったら、過去の自分と今の自分を比べてみたら?」と言われた時に、すごく腑に落ちました。
理想に追いついているかどうかは一旦置いておいて、過去の自分と今の自分を比べると、前進しているのは間違いない。

この体験から、私はこの言葉を使う力をそれでいいんだ力と名付けました。
(名前はダサいですが、わかりやすさ優先で。)

「それじゃダメだ」が多い人へ

批判的思考(クリティカル・シンキング)2ができる人ほど、つい「それじゃダメだ」と言いがちです。

幼少期に周りから肯定的な言葉があまりもらえなかった人は、肯定してもらうための基準が高くなり、ミスや穴を見つける力が鋭くなります。

そういう人にとって自分や他者に「それでいいんだ」と言うのは簡単ではないと思います

ここには育った環境の影響が大きく、私の周りでも理想が高く、幼少期に厳しい経験をしてきた人ほど自己に厳しい傾向があります。

では、どうすればいいのか。万能薬はありませんが、最初の一歩として言葉を先に置くのがおすすめです。

結論から「それでいいんだ」と口に出す。苦しんでいる誰かに出会ったら、ためらわず「それでいいじゃん」と伝える。
もちろん「何がわかるんだ」「これでいいわけない」と返されるかもしれません。

それでも言ってあげてほしい。

自分に厳しい人は、自分で自分に首輪をしている状態。

だからこそ他者の言葉が首輪を外すきっかけになります。

厳しさを前進力に変える

1) まず肯定(セルフ・コンパッション):「今できる範囲でよくやった」
2) 次に改善(建設的な批判):「次に直すならどこ?」
この肯定 → 改善の順序が、厳しさを前進力に変えます。

時代の影響も、たしかにある

少し話は大きくなってしまいますが、自己肯定は時代にも影響されているのではないかと思っています。

日本のバブルの時代は、景気が良くおおらかな雰囲気を感じますが、今の時代は少子高齢化・賃金停滞・将来不安などが蔓延っています。

経済的に余裕があれば「それでいい」といえる余裕が生まれますが、余裕がなければそんなことも言ってられないと思います。

社会の空気がタイト化していると、個人レベルでも自己・他者への基準が厳しくなりやすい(「ミスれない」空気)。

実際に心理学・文化心理学でもそういった理論があるようです。

タイト/ルース文化理論
脅威や制約(資源不足、災害、治安不安、競争激化)が強いと、社会は規範を厳格化=タイト化し、逸脱への許容が下がります。日本はもともとタイト寄りで、脅威が強まる局面ではさらに締まりやすい傾向が示されています。

“欠乏”の心理(スカーシティ・マインドセット)
収入・時間・将来不安などの資源の乏しさ感は、注意を“リスクと不足”に偏らせ、他者への寛容や助け合いを削りうることが実験・レビューで示されています(もちろん状況次第で逆効果もあり、常に一方向ではありません)。

この視点を持つだけでも、「最近、空気がきついのは自分の問題だけじゃない」と少し呼吸がしやすくなるかもしれません。

「それでいいんだ」と「それじゃダメだ」のバランス

土台に必要なのはまず肯定です。土台がないと高く積み上げられません。

ただし、肯定だけに寄りかかると成長は止まります。

健全に成長するために必要なのは肯定と改善のバランス

「アメとムチ」とも言いますね。

定期的に振り返って、自分は最近「それでいいんだ」が多いのか、それとも「それじゃダメだ」が多いのか、棚卸しをしてみるといいかもしれませんね。

「それでいいんだ」を謳った曲

玉置浩二『田園』

天才バカボンOP


  1. セルフコンパッション:Kristin Neff による「自己への優しさ・共通の人間性・マインドフルネス」から成る自己への思いやりの枠組み。 

  2. 批判的思考:情報や状況を鵜呑みにせず、根拠や論理を多角的・客観的に分析し、その妥当性を評価することで、本質的な課題を捉え、より的確な結論を導き出す思考法。